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2018.03.14

ギター・マガジン

ダニー(ザ50回転ズ)インタビュー/最高傑作『ザ50回転ズ』全曲解説!

Text by 山本諒(ギター・マガジン編集部)Photo by 木場ヨシヒト、tommy

浪速のロックンロール・トリオ、ザ50回転ズの新作『ザ50回転ズ』。"うむ、セルフ・タイトルを冠したのも納得! これは最高傑作と言ってもいい内容だ!"そう意気込んだ編集部は、ギター・マガジン20184月号にてダニー(vo,g)にインタビューを敢行した。収録曲すべての音楽的モチーフやギター・プレイについて話を聞いた......のだが、取材テープは3時間を超え、誌面にはほんの一部分しか掲載できませんでした! というわけで、インタビューの続きを本ウェブにてたっぷりお送りしたい。アルバムの音源を聴かないとピンとこない話が多いかもしれないが、ダニーのとてつもない音楽愛がたっぷり伝わるはずだ。

マラカスひとつにしても、
ボ・ディドリーのうしろでやっている
ジェロム・グリーンのグルーヴ感ですよ。

---- 新作『ザ50回転ズ』の2曲目は「ハンバーガーヒル」(注:1曲目の「Vinyl Change The World」については本誌4月号を参照)。パブ・ロック風のAメロからメロディアスに展開するこの曲では、どんなバンドをイメージしたんでしょう?

 歌が入るまではリフ一発なんですけど、ここは完璧にドクター・フィールグッドです。しかもライブ盤(『殺人病棟』)ですね。この曲は"不穏な感じ"がテーマで、中盤でアナログ・シンセの"ギョワーン"みたいな音をけっこう入れたんですよ。

---- けっこうエフェクティブな音ですよね。あそこもなにかモチーフが?

 ネタバラシすると『狂い咲きサンダーロード』(80年)っていう映画の冒頭ですね。"ギョワーン!"っていうシンセが鳴るシーンがあって、"カッコいいな"とずっと思っていて。で、ザ・クラッシュじゃないですけど、ちょっとレゲエっぽい中盤セクションに不穏なシンセ音を入れました。

---- サビで一気にメジャーになりますが、裏メロでメロディアスな単音フレーズを弾いてますよね。個人的にはこの裏メロの"拍の取り方"に、真島昌利さんからの影響を感じました。

 わかるわかる。"デーデーデ、デーデーデ"みたいな拍ですよね。うわあ〜、やっぱり知らず知らずのうちに影響受けてんねんなぁ......ブルーハーツは、僕の原点みたいなところもありますからね。そういえばこの曲ね、ほかの人に言われたんが、"ブルーハーツの「チェルノブイリ」と展開が似ている"と。ぜんっぜん気付いてなかったんですけどね。

---- Vinyl Change The World」でもブルーハーツの影響が見えますし、かなり大きな存在なんですね。次はポップで明るい「星になったふたり」ですが、冒頭はいわゆる"モータウン・ビート"です。

 イントロはもう「You Can't Hurry Love(恋はあせらず)」(シュープリームス)です。んで、途中でボ・ディドリーのビートになりますね。裏でなってるマラカスも完璧に、ジェロム・グリーンですわ! ボ・ディドリーのうしろでやってるジェロム・グリーンのグルーヴ感ですよ。細っか〜い話やなぁ(笑)。

---- いや〜、こういう具体的な話は楽しいですよ〜。

 ならええか(笑)。あとこの曲ね、ミックスの時に"ロックパイル(デイヴ・エドモンズやニック・ロウ擁するパブ・ロック界のスーパー・グループ)みたいにしようぜ"っていうことになって。デイヴ・エドモンズみたいにアコギの刻みを重ねたら、音が一気に決まりましたね。で、タイトルに"星"って入れてるから"キラキラさせとかな!"と思って、リッケンバッカーのハイポジで"シャリーン"っていうコードも入れてます。

---- メロディをなぞったギター・ソロが入りますが、少し不思議なサウンドですよね? 12弦ギターっぽい音のオクターブ・フレーズですが、12弦を使っても出ないニュアンスだな〜と思って。

 このソロ、実は苦肉の策だったんです。ホンマはアコギだけで弾こうと思ったんですけど、この時使ってたヤマハのFG-170がもうネック反りすぎてて、ハイポジに行けなくて(笑)。それで、まずリッケンの単音で高いフレーズを弾いて、その1オクターブ下をアコギで弾いてますね。

---- なるほど〜。妙にかわいい音ですよね。

 子供の危うさ、みたいなのも歌のテーマにあったので、ちょっとかわいらしいフレーズになってます。

---- ライブでどうなるか楽しみです。いや〜ライブ観に行きたい(笑)。

 いや〜、ライブのリハせな(笑)。

---- 続く「新世界ブルース」は打って変わって、ド直球な歌謡曲です。イントロのファズの音が、また当時の邦楽っぽい感じで切ない(笑)。

 ね! 90年代的な凶悪ファズじゃなくて、ちゃんと歌に寄り添うファズですよね。これは古いマエストロ(FZ-1S)です。ACE TONEもスタジオにあったんですけど、マエストロが絶妙でした。

---- Aメロのカッティング・ニュアンスがもう歌謡曲すぎて、本当に特徴つかんでますよね。

 "ンッ、チャーラッ"っていうバッキングね。ここは、今流行りの16ビート・カッティングです! なんつって、このニュアンスは流行ってないっちゅうねん(笑)。

---- これ、インスパイアされた歌手などはいましたか?

 60年代の黛ジュンですね。「恋のハレルヤ」とか「ブラック・ルーム」みたいな、ジャズ上がりの人たちがバック・バンドをやっている時代の"キャバレー歌謡"というかね。当時のジャズ系ミュージシャンって、アンプをドライブさせる発想がないんですよね。だからみんな、リードで急にファズ踏むんです。ああいうおもしろさをやってみたくかった。それでこの曲、ギターの見せ場がファズのリード・パートくらいしかない......ってのもおもろいでしょ? キャバレー・バンドってなんとなくそうじゃないですか。"ンッ、チャーラッ"ってバッキングを地味〜に弾いて、"前出てきていいよ"っていう時だけファズ踏んで出てきて、またすぐ大人しく伴奏に戻るっていう(笑)。

---- なるほど(笑)。山口百恵や沢田研二というよりは、60年代後半の歌謡曲に近い感じでしょうか。

 そうそう。でね、さらにラッパ入れたら、"これこれ!これや!"って、全員爆笑しながらズッコケましたよ。あとは歌頭のヴィブラスラップね! これ入れな、もう収まりつかんってことで登場しましたね。

2ページ目:マーク・ボランっぽくやっても、全然エロティックなボーカルができない。ガラガラやし(笑)。