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2018.03.15

リットーミュージック

石川ひとみインタビュー/レコーディングでの不思議な体験|『A面に恋をして』より

text by 谷口由記

シングルの表題曲が"A面"と呼ばれた時代に生まれた名曲について、歌い手自らが振り返る書籍『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』から、貴重な証言の数々を抜粋してお届けするインタビュー。第5弾は、石川ひとみが語る「まちぶせ」。

石川ひとみ.JPG

石川ひとみ「まちぶせ」

レコーディングでの不思議な体験

―本番の歌入れについて、覚えていますか?

 感覚は覚えています。これもね、うまく表現できないんです。本当に。レコーディング中にあんな感覚になったのは、あのときだけです

―どういうことですか?

 えー、難しいんだなー。なんて言うんだろう。さっきも言いましたけど、私は、ワーッと声を出すタイプで、割と大きな声を出したり、声を張る歌が好きだったし、そういう歌い方をしてきたんですけど、「まちぶせ」のレコーディングは、自然とああなったんですよ。
 ヘッドホンをして、自分の世界しかなくて、歌っているときに、なんか不思議な感覚......なんて言うんだろう。背中から身体の真ん中に感じるものがあったんです。本当に。

―たしかに石川さんといえば、高音が強くキレイに伸びるイメージがあります。この曲のなかにも、そういう部分はありますけど、2番のサビのところで、本来伸びるところが、グッとつまるところがあって。

 ああ、リフレインのところ? ありますね。覚えています。

まちぶせJ.jpg―あれが、長岡さんのディレクションなのかなと。通常なら別テイクを使うところを、長岡さんはあえて生かしたんだな、と思ったんです。

 きっと、そうですね。普通に歌っているテイクもあったと思うんですけど。あのかすれた感じのところもすごく覚えています。喉の感覚とか、背中から身体の中心にかかる感覚を全部覚えていて。自分の歌のカプセルに入っている感じ。

―歌の世界観に入っている感覚?

 世界観なのかわからないんだけど。自分しかいない感覚で、そのなかでヘッドホンをして歌っていたので。歌っていて「なんだろう?」って思ったのもそのときだけですね。誰にも言わなかったけど。だって、うまい言葉が思いつかないし、とにかく、この感覚は今までに経験したことないなって思いながら歌っていました。
 まわりはほとんど見えてなくて、歌い方も、自分の好きなように、自分の感覚どおりに歌って。「夕暮れの 街角」って。私の真似をする人に、「ひとみさん、切って歌っていますよね」って言われて、初めて「あ、そう」って思ったくらいに、自分のなかでは意識していなくて。あとで言われて、本当だーって。

―石川さんが、賭けた曲。リリース直後は、チャートの動きが鈍かったですね。それについてはどう思ったんですか?

 まったく、気にならなかったですよ。だって、この曲を歌うことができたから、それだけで大満足で。どんな場所で歌わせていただくにせよ、お客さんの多さ少なさ、関係なく。とにかく、そこにいらっしゃっている皆様のなかのたった1人にでも、何か、いい曲だなとか、素敵だな、とか、なんでもいいんですけど、何かを感じてくださったらそれで満足だったので。ヒットも何も関係ない。だって最後だから。こんなに好きな曲だから、歌うことが楽しくて。

(続きは書籍『A面に恋をして』にて!)

いしかわ・ひとみ●1959年愛知県生まれ。1978年に「右向け右」で歌手デビューし、1981年の「まちぶせ」がヒット。デビュー40周年となる2018年には、石川ひとみ40周年記念ベスト『40th〜石川ひとみanthology〜』(ポニーキャニオン/3月21日発売)と、40周年オリジナル・アルバム(テイチク)の発売を予定している。
http://www.ishikawahitomi.com/


A面に恋をして 名曲誕生ストーリー

品種書籍
仕様四六判 / 192ページ
発売日2018.03.16

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