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2018.05.01

ceroが4th『POLY LIFE MULTI SOUL』に込めたハイレベルな楽曲構造とそのプロダクション|サウンド&レコーディング・マガジン2018年6月号より

Text by Tsuji. Taichi

ある程度カオティックな感じを残すことで
"ダンス"につながると思うんです

髙城晶平(vo、g、fl/写真左)、荒内佑(k、sampler、cho/同中央)、橋本翼(g、cho/同右)の3人から成るcero。2004年の結成以降、ソウルやジャズ、中南米音楽などを独自のポップ・ミュージックに昇華させ、着実にその名を浸透させてきた。そして2015年にリリースした3rdアルバム『Obscure Ride』でブレイク。心地良いメロディや音色はそのままに、ダンス〜ビート・ミュージックに接近した一枚だ。5月16日に発売される4thアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』は、前作の延長線上にありながらも、より高度なアレンジとグルーブを獲得。現代ジャズやニューウェーブなどを感じさせる面もあり、本誌としてはプロダクションの内容が気になるところだ。今回はceroのメンバーに加えて、エンジニアリングを手掛けた奥田泰次氏にもインタビューすることができたので、その模様をお伝えしよう。

ツアー・メンバーの一新が楽曲の構造にも変化を与えた

ー今作『POLY LIFE MULTI SOUL』は、前作までよりもリズム・ワークが複雑化した印象です。

荒内 前作でポリリズムなどを取り入れたのが面白かったので、今回はリズムの凝った曲が増えたのかもしれません。あとはライブのお客さんが増えた反面、ノリが画一化されてきたような印象もあったので、リズムにもっと多様性があれば変化が出るかなと思っていたんです。

髙城 2016年11月からの"MODERN STEPS TOUR"で、ツアー・メンバーを一新したのもきっかけになっています。僕らはまず、楽器の編成ありきで、それを生かすためにどんな曲ができるのかを考えるんです。今回の場合だと、ドラムとパーカッションで複雑なリズム・ワークが可能になったり、女性コーラスが入ったことで多様な言葉の乗せ方ができるようになるなど、いろいろな変化がありました。そんな中、荒内君が作ってきたのが「魚の骨 鳥の羽根」という曲で、そこからアルバムが始まった感じなんです。

ーメイン・コンポーザーは荒内さんなのですか?

荒内 いやいや、特に決まっていないんですよ。

髙城 先に曲を出した人が主導する感じなんです。今回は荒内君がその役割だったので、付いていくうちに段々と自分のできることが分かってきました。1stとか2ndのときは橋本君がミックスをやっていて、荒内君や僕が好きにやっていることの最終アウトプットになってくれていたから、その意味では橋本君がイニシアティブを取っていた。かと思えば、僕が主に作曲していた時期もあるのでいろいろですね。

ー今回、曲の原案はどのようにして作ったのでしょう?

荒内 僕は普段、リズムのアイディアなどをメモに書き留めておいたり、人の音楽を聴いてインスピレーションを受けた部分などを譜面に記録しているんです。で、そろそろ曲を作ろうかとなったときに、そうしたストックをヒントにして発想を膨らませる感じ。曲作りに使うのはAPPLE Logicですね。今回はバック・トラックのデモを作った後、ほとんどの歌詞を髙城君に書いてもらったんです。曲調がバラエティに富み過ぎているような気がして、何で統一性を持たせようかと考えたときに、歌詞だったんですね。でもオーダーの仕方がやや特殊で、"Bメロとサビのメロディを作ったから、Aメロと歌詞はお願いします"みたいな感じだった。

髙城 作詞者として制約があるように思えたものの、やってみると意外に自由度が高かったんです。全編にわたってメロディが入っていて、それに歌詞をはめていくとなるとJポップ的になりがちなんですが、今回の方法だと歌とバック・トラックの関係が面白くなりやすい。歌詞だけでなくAメロのメロディ・ラインなども任せてもらえたので、その点でも自由度が高いと感じていましたね。で、曲ができたらリハーサル・スタジオに入って、ツアー・メンバーで音合わせをするという流れでした。

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2018年6月号にて!)


サウンド&レコーディング・マガジン 2018年6月号

品種雑誌
仕様B5変形判 / 244ページ
発売日2018.04.25