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2017.07.19

光田康典が語る『クロノ・トリガー』 〜kiyoが解き明かすメロディの秘密|キーボード・マガジン 2017年7月号 SUMMERより

Text by キーボード・マガジン編集部 Photo by 星野俊

 『クロノ・トリガー』で鮮烈なデビューを果たし、その後もゲーム・ミュージック・シーンの第一線で活躍を続けている作曲家、光田康典。その音楽に心酔するJanne Da Arcのキーボーディストのkiyoが、唯一無二のメロディの秘密を解き明かすべく、光田のプライベート・スタジオを訪れた。聴く者を魅了してやまないサウンドが誕生した背景に迫る。

光田康典×kiyo

─kiyoさんが光田さんの音楽に出会ったのはいつごろですか?

kiyo 『クロノ・トリガー』が出たときなので、1995年ですね。僕が20歳のころです。そのころは時間があったので、ゲームばかりというか、『クロノ・トリガー』ばっかりやっていました。寝ても覚めても、画面ヤケするくらいやっていましたね(笑)。それくらいずっと流れていても、全然しんどくない音楽っていうのがすごいですよね。

─どういうところが気に入ったのでしょうか?

kiyo それまでのRPGは、オーケストラのイメージが強かったんですが、光田さんの『クロノ・トリガー』はちょっと違っていたんですよね。オーケストラではあるんですが、オーケストラっぽくないというか。それがまず衝撃でした。サントラも買って聴いていたんですが、ロックという感じでもないんですよ。そのころの僕は音楽にそこまで詳しくなくて、分析的に聴くこともできなかったんですが、大人な音楽という気がしたんです。"お洒落な音楽やな〜"と思って憧れましたね。あとで考えたら、9thの使い方なんだなとか分かってきたりしたんですけど、そういうテンションを使ったコード感が僕の中で新しかったんです。

─『クロノ・トリガー』は光田さんが手がけた最初の作品ですよね。

光田 そうですね、実質デビュー作です。

─それまでのゲーム音楽と違いを持たせようとしたのでしょうか?

光田 狙ったわけではないんですが、当時のゲーム音楽はやはりオーケストラかポップスという感じで、あとはいわゆる8ビット系、昔で言うピコピコ音が主流になっていました。だから変わったことをやりたいなっていうのはあったんですね。今、kiyoさんがテンション感のことを言われていましたが、僕はジャズがすごく好きだったんで、それが自然と出てしまったのかなと思います。あと、スーパーファミコンは8トラック、要するに8音しか使えないので、ベースとリズム、メロディ・ラインと3声の和音を入れるとそれで終わりなんですね。そうすると3コードしか使わないんですけど、僕はあえてそこでテンション・ノートを使って、スーパーファミコンでも複雑なコードをやってみようと。ある種の実験的な部分もあったんですよね。だから今までにない独特な雰囲気になったんじゃないかと思います。そこは狙ってやったというよりも、自然とそうなりました。

─制限がある中で、凝ったサウンドを実現するのは難しくないのでしょうか?

光田 難しいですね。しかも、効果音も8トラックにカウントされるんですね。だから消えても問題ない音を下のトラックに追いやっていくんですけど、そのテンション感を出す音が下に行きがちなんですね。そうすると戦いなどが始まって効果音が入った瞬間に、曲の雰囲気が変わってしまうんです。そういうこともあって、当時はなかなかみんなやらなかったんですよ。でも僕は、消えたら消えたでいいと思ったのと、自分が作るメロディはテンションをなぞることが多かったので、そのメロディさえあれば、テンション感は失われないだろう......というような計算はあったんです。だからそういう意味で、ほかのRPGとは変わった手法、サウンドになっているというのは確かだと思います。

kiyo 今おっしゃっていたとおり、主旋律の進み方、音の取り方がそれまで聴いたことない構成だったんですよね。3和音のコードではない感じ。通常のゲーム音楽とは違う風合いがあったので、さっきも言いましたが、部屋でずっと流れていてもしんどくない音楽、生活の一部になってたんです。光田さんは、それまでサウンド・プログラマーをやっていたんでしたよね?

光田 そうですね、効果音を作ってました。『FF V』や『ロマンシング サ・ガ2』などをやりましたね。その前に『半熟英雄』の2作目で、すぎやまこういち先生とお仕事させてもらったんですよ。マニピュレーターとして参加して、ファミコンやスーパーファミコンなどでうまく音を鳴らすやり方を、すぎやま先生に教えていただいて。それを踏まえて、自分がやるときはちょっと変わったものをやりたいというのもあったんですよね。ちょうどいろんなものが良いタイミングで重なって、『クロノ・トリガー』という特殊なものができたのかもしれないですよね。

(続きはキーボード・マガジン2017年7月号 SUMMERにて!)


品種雑誌
仕様A4変形判 / 184ページ / CD付き
発売日2017.06.09