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2017.07.01

JIRO(GLAY)ベーシストとしての第二章─ 『SUMMERDELICS』発売に際して|ベース・マガジン 2017年7月号より

Text by 近藤隆久 Photo by 笹原清明 Hair&Make by 橋本孝裕(SHIMA) Styling:坂崎タケシ(StyleLAB.)

JIRO(GLAY)ベーシストとしての第二章─|ベース・マガジン 2017年7月号より

 どんな物事であれ、その"道"を極める際に最も重要なことは、"継続すること"である。デビュー23年を迎えた現在、GLAYのJIROは、まるでベースを始めたてのキッズのように新鮮かつ無垢な気持ちでベースという楽器に向き合い、今なおベース道を追求している。そのきっかけとなったのが、プロデューサー佐久間正英との別れ、そして亀田誠治との出会いである。さらに、ここ最近のレコーディングやツアーといった出来事のなかで、ステージでベースを弾くことに対する意識の変化があったという。JIROが立つ現在の境地とは? その真髄に迫る。

"耳に残らない"ベースを極めること 躍動している自分がいることは、 バンドにとって絶対にプラスでしかない。

─ここ数年、本誌インタビューなどで、JIROさんが"ベースを弾くことが楽しい"といった主旨の発言をよくされていて。今もそういったモードですか?

JIRO そうですね。佐久間(正英)さんと作業していた頃は、ギターがふたりいるので、ベースを弾かないことでアレンジを成立させるっていうイメージだったんですよね。変な言い方ですが......。

─いやいや。引き算の美学というか、アンサンブルのなかでの、ベースの立ち位置を考えたんですね。

JIRO はい。メロディや楽曲自体が良くて、世のなかに出ていくような曲が揃っていたので、そのなかで耳につくようなベースは必要なのかな?っていう考え方だったんですね。そういうこともあったし、俺のアプローチに対して佐久間さんからは特に何も言われることがなかったので、これでいいんだって思っていたんです。ただ、ライヴで演奏したときに、プレイヤーとしての充実感がない瞬間もあって。だから、ライヴ・ヴァージョンでは、自分がおもしろく弾けるようにベースのフレーズをアレンジしたりもしていたんですよ。

─なるほど。

JIRO それから亀田誠治さんと出会って。亀田さんの手がけるアレンジって、デモの段階でベースのアプローチがとてつもないことになっていて(笑)、それを受け入れるために、最初はそれをコピーすることから始めたんです。で、"なるほど、こういうアプローチもあるのか!"っていう感じで、俺は"亀田塾"の塾生になったんですよ。そういう気持ちでいたら、ベースを弾くことがおもしろくなってきて。実際、今回のアルバムもそうなんですけど、亀田さんがアレンジしてくれたベース・ラインって、俺のなかからは生まれてこないベースだなって思うことが多くて。そういうときは、正直にメールするんです。"亀田さんが考えてくれたベース以上のフレーズが見つかりません! コピーしていいですか!?"って。そうすると"どうぞどうぞ"って言ってくれるんですよ。

─ベースを楽しんでいる感じは、今作『SUMMERDELICS』にも色濃く表われていますよね。これまでにはなかったようなフレーズのアプローチが随所に見られて、意気込みを感じます。

JIRO そうですね。ベースがメロディを邪魔するのでは?っていう、その頃の考え方とはまったく逆なんです。結局、アンサンブルのなかで躍動している自分がいるっていうことは、バンドにとっても絶対にプラスでしかない。もちろん、メロディを殺さないようにあえて何も弾かないとか、シンプルなことしか弾かないっていう考えも、それで成立していればまったく問題ないんですよ。ただ今は、いろんなフレーズを弾くことによって、ライヴで"この曲、すっげー忙しいんだけど!"みたいな曲でも(笑)、プレイしたあとに"よしっ!"っていう充実感があったり。そういうことを自分のなかで楽しんでいるんですよね。そういう意味で、"弾いていて楽しい"っていうことなんですよね。

─それを楽しいと感じる感覚って、楽器を弾くモチベーションの原点のひとつですよね。

JIRO そうなんですよね! だから自分のなかでは、亀田さんにアレンジしてもらったフレーズであろうと、自分の考えたフレーズであろうと、もはや関係ないんですよ。ただ、そういった今の状態って、これまで23年間続けてきて──さらにあと何年、GLAYが続くかわからないですけど──そのなかの一瞬の出来事だと思うんです。それがデビューしたての頃だったら、"人の考えたフレーズは絶対に弾かない!"とか"他人と同じようなベースは弾かない!"っていうふうに、確固たるポリシーを持ってやっていたと思うんですよね。でも結局、自分の発想の範疇でやれることはやるなかで、"削ぎ落として、削ぎ落として、ベースのフレーズが耳に残らない"っていう境地まではたどり着いたと思っていて。

─耳に残らないベース......究極ですね。

JIRO うん。でも、自分のベーシストとしての人生の第二章が始まったとすれば、今度は"フレーズを弾くことがおもしろい"っていう時期だと思うんですよね。

─興味深いですね。JIROさんのベース歴のなかで"このときの自分はこういうモード"っていう切り替えがあって。その時期と亀田さんとの出会いが合致したという。

JIRO そうですね。自分のなかではそういう段階なのかなって理解していますね。

(続きはベース・マガジン2017年7月号にて!)


品種雑誌
仕様A4変形判 / 156ページ
発売日2017.06.19