「湘南」の誕生 音楽とポップ・カルチャーが果たした役割

定価:本体1,600円+税

品種書籍
著者増淵 敏之(著)
仕様288ページ
発売日2019.02.28
ISBN9784845633555

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内容

「湘南」はイメージである。
富裕層、若者層、ヤンキー層から成る三層構造を
音楽とポップ・カルチャーから解き明かす、野心的な「湘南」論。

「湘南」とは何なのだろうか。結論から言えば、それはイメージなのである。そのイメージ化にはさまざまなメディアやコンテンツ作品の影響が大きく見られる。本書は、そのイメージ形成のプロセスを、音楽、小説、映画、マンガ、アニメなどのポップ・カルチャーに着目して解き明かしていく。そうすると、「湘南」のイメージは富裕層、若者層、そしてヤンキーの三層構造から形成されていることが浮かび上がってくるのだ。

装画:佐々木悟郎

【目次】
■第1章「湘南」の発祥と範囲
命名の由来(「湘南」の語源)
「湘南」の範囲
大磯別荘地(ベルツ博士・維新の元勲たち)
サナトリウムと「湘南」
御用邸とマリーナ
一般イメージ
「湘南」ナンバー
「湘南」ブランドの使用例
コンテンツ作品によるイメージ形成

■第2章「湘南」の音楽
「湘南」音楽の基盤形成
「湘南」サウンドの誕生
松任谷由実の「湘南」
サザンオールスターズの「湘南」
アイドルたちの「湘南」
夏と「湘南」
身近なカリフォルニアだった「湘南」
硬派たちの「湘南」
MV(ミュージックビデオ)の中の「湘南」
アジアン・カンフー・ジェネレーションの「湘南」
今でもみんな「湘南」が好き

■第3章「湘南」の文学
村井弦斎『食道楽』
徳富蘆花「湘南雑筆」
鎌倉文士の誕生
「太陽族」の登場
古都・鎌倉のイメージの定着
オートバイ、若者、「湘南」
「湘南」と恋愛
村上春樹と「湘南」
さまざまな物語の舞台としての「湘南」

■第4章「湘南」の映像
松竹大船撮影所
小津安二郎『麦秋』『晩春』の鎌倉
黒澤明『天国と地獄』に描かれた「湘南」
「太陽族」からネクストへ
「若大将」シリーズ
極楽寺
描かれる若者たちの物語
バブルと「湘南」

■第5章「湘南」のマンガ、アニメ
わたせせいぞうと「湘南」イメージ
実は連作『ラヴァーズ・キス』『海街diary』
魔界の都・鎌倉
『スラムダンク』の中の「湘南」
『ピンポン』の中の「湘南」
『南鎌倉高校自転車部』と『とめはねっ!鈴里高校書道部』に見る部活動
ヤンキーと「湘南」
意外と少ないオリジナル「湘南」アニメ

■第6章 プリズムの「湘南」
富裕層、若者層、ヤンキー層のリミックス
地域のブランディング
湘南とは呼ばれたくない鎌倉
南葉山ってどこ?
クロスメディア戦略が創るイメージ
『湘南青春街図』
雑誌メディアの役割
「湘南」の食文化
フィルム・コミッションの活動
コンテンツが創った「湘南」イメージ

◎本書に登場する音楽とコンテンツ
サザンオールスターズ、ブレッド&バター、湘南爆走族、稲村ジェーン、太陽の季節、中村八大、松任谷由実、大滝詠一、杉真理、湘南乃風、キマグレン、吉田秋生、村上春樹、徳富蘆花、スラムダンク、大佛次郎、立原正秋、石原慎太郎、石原裕次郎、伊集院静、三上延、加山雄三、山下達郎、片岡義男、南鎌倉高校自転車部、小津安二郎、黒澤明、ホットロード、是枝裕和、俺たちの朝、クレイジーケンバンド、杉山清貴&オメガトライブ、彼女が水着に着替えたら、わたせせいぞう、アジアン・カンフー・ジェネレーション、TUBE 、DESTNY鎌倉ものがたり、海街diary、ピンポン、狂った果実、湘南純愛組、and more

著者プロフィール

編集担当より一言

著者の増淵さんと知り合ったのは、ある企画の持ち込みで増淵さんが弊社を訪れた時でした。
増淵さんはいわゆるコンテンツツーリズムの世界の第一人者で、それに絡んでいろいろ雑談しているうちになぜか「湘南」の話になりました。それが抜群に面白かったので、本にしませんか?と言ったのが企画の始まりです。打ち合わせを重ね、企画書を何度も書き直し、約半年の執筆期間をかけて本書はできあがりました。

「湘南」って不思議だな、と昔から思っていました。なんか裕福そうな人が住んでいる。片やサザンオールスターズや加山雄三などポップスの生誕地でもある。それに、藤沢生まれの知り合いが言うには、暴走族のメッカでもある。そういったイメージは、実は音楽や文学、映画などのコンテンツが作ったのだというのが本書の骨子です。

増淵さんは日頃のフィールドワークの成果と得意のサブカル知識を駆使して、マニアックな持論を展開。サーフボードに乗ったサーファーのように荒波の上を渡っていきます。楽しいですよ。

ところで、実際に「湘南」を歩いてみると、サーフィンショップやオートバイショップはもちろんのこと、飲食店、病院、マンション、アパート、不動産屋、商店街組合、美容院などなど、たくさんの業態にわざわざ「湘南」とつけていることに気付かされます。

仮に辻堂のマンションであれば、湘南辻堂◯◯◯レジデンス、といった具合です。頭の「湘南」は別になくてもかまわないでしょう。いや、ないほうがむしろすっきりする。それでもつけている。誇らしげに。それこそが「湘南」の本質であるような気がします。(編集委員会/野口広之)