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2019.08.23

ザック・スターキー 〜レゲエ・レーベル設立とザ・フーでのドラム・プレイ〜

Interview by Ken Sharp © Veenhoven-Amsterdam, 2019 Translated by Tomohiro Moriya Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Desert Trip

リンゴ・スターの息子であり、オアシスやザ・フーのサポート・メンバーとしても活躍してきたザック・スターキー。2つのセクションでお届けする本インタビューでは、自身が立ち上げたレゲエ・レーベル"トロージャン・ジャマイカ"の設立経緯と活動、そしてザ・フーでの彼のプレイやキース・ムーンとの関わりについて語られている。ここでは、第1セクションで紐解かれた彼の音楽ルーツやレゲエへの情熱について、その内容の一部を抜粋してお届けしよう。

Zak Starkey × Trojan Jamaica
~レゲエへの情熱とレーベルの設立~

エネルギー溢れるドラマー、ザック・スターキーはザ・フーのドラマーの座に長年君臨し続けている。彼のエキサイティングでパーカッシヴなスタイルはバンドの伝説的なドラマー、キース・ムーンの魂を驚くほど見事に高みに積み上げている。北米での小規模なツアーの第一幕を最近終えたばかりではあるが、バンドは今秋アメリカに戻り、オーケストラを従えた新たなツアーを計画している。ザックは幼少の頃から熱心なレゲエ・ファンであり、ザ・フーでの仕事の合間にトロージャン・ジャマイカという新レーベルをシャーナ"スシュ"リグズと共に設立した。我々は機会を得て、レゲエ・ミュージックのホームであるジャマイカにて電話インタビューを敢行。ザックはレゲエへの深い愛、新レーベルでの冒険、キース・ムーンとの交遊、そしてザ・フーの制作中の新スタジオ・アルバムについて語り明かしてくれた。

ブルースとレゲエは
共に"苦しむ者達"の音楽なんだ

●本日のインタビューでは、まず、あなたがレゲエ・ミュージックに抱く情熱について聞かせていただきたいと思います。そもそも、あなたが初めて触れたレゲエとは、どういうものだったのでしょうか?

○母がトゥーツ&ザ・メイタルズ『ファンキー・キングストン』のレコードを持っていて、それが僕にとって最初のレゲエ音楽の入り口だったね。パンクにもハマっていたんだけど、ザ・クラッシュ「ハマースミス宮殿の白人」の歌詞に出てくるディリンジャーとか、そういったレゲエ・アーティスト達をチェックするようになったんだ。12歳になると、バーニング・スピアーの大ファンだった父が『マン・イン・ザ・ヒルズ』のレコードをくれたりして。そういうわけで、僕のレゲエとの遭遇というのは、クラッシュと両親がもたらしてくれたものだったんだ。これって、ちょっと変な感じもするけれどね(笑)。

●クラッシュのようなパンク・ロック・バンドによる「ハマースミス宮殿の白人」、「ポリスとコソ泥」、「しくじるなよ、ルーディー」、「ブリクストンの銃」といった楽曲が、独自のレゲエの解釈を新しいオーディエンスに届けていたということですね?

○その通りだよ。特に、クラッシュが10インチのアナログ・レコードで出した『ブラック・マーケット・クラッシュ』は、レゲエのエッセンスが入ったパンクとしてもベストな例で、新しいオーディエンス達を夢中にさせたんだ。そういった観点で聴き直してみると、レゲエはパンクと結構近いものなんだっていうことがわかるはずだよ。どういうことかわかるかい? この2つは、アティチュードが本当に似ているんだ。

●パートナーであるシャーナ"スシュ"リグズと共に自身のレーベル=トロージャン・ジャマイカを設立するに至った経緯と新作について教えてください。

○今回、僕らはかなりの数の曲をレコーディングすることになった。そこで、楽曲を適切に管理し、制作に関わった人にきちんとした対応をできるように自分達のレーベルを作るべきだという話になったんだ。BMG(旧レゲエ・レーベル"トロージャン・レコーズ"の権利を所有、ザックと契約したドイツ企業)のおかげで、僕達は流通の術も得ることとなった。今作『Red Gold Green & Blue』は、こうして設立したトロージャン・ジャマイカにとって最初のコンピレーション作品なんだ。このアルバムでは、ロビー・シェイクスピア、トゥーツ&ザ・メイタルズ、マイカル・ローズ、キダス・アイ、アンドリュー・トッシュ、フレディー・マクレガーといったレゲエ・アーティスト達が、ブルース・ソングなんかをカヴァーしている。レゲエとブルースのハイブリッドだね。スシュと僕がやりたかったのは、アメリカのブルース(青)の歌詞をジャマイカ風に書き換えることで、赤/金/緑(ジャマイカを含むパン・アフリカ主義の色)に染めてしまうことだったんだよ。

●ブルースとレゲエには、深いつながりがあるということですね。

○まさにその通りさ。(ブルースとレゲエは)共に、"苦しむ者達"の音楽なんだ。ジャマイカでは1930年代から、圧政に対してラスタマン(貧しい黒人労働者や農民が立ち上げた新興宗教の信徒達)が抵抗運動を行っていた時代があって、そのかなり後にレゲエが誕生した。ラスタマン達は60年代まで迫害され続け、生死を問わず指名手配されていた。それがピーター・トッシュの「ウォンテッド・ドレッド・オア・アライヴ」の発表につながったんだけど、僕らはこの一連の流れとピーターのメッセージに本当に感銘を受けたんだ。これを貫き続けた彼は当時、最も勇敢な男だったと思うよ。

本誌では引き続き、同レーベルからリリースされたコンピレーション・アルバム『Red Gold Green & Blue』のレビューも紹介。そして第2セクションでは、ザックのドラムとの出会いやキース・ムーンとの交遊、現在のザ・フーについてもたっぷりと語られている。このインタビューの続きは、8月24日(土)発売の「リズム&ドラム・マガジン」2019年10月号にて!

▼「リズム&ドラム・マガジン 2019年10月号」コンテンツ内容
https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3119119005/

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