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2017.07.10

サウンド&レコーディング・マガジン

『岸田繁「交響曲第一番」初演』インタビュー|サウンド&レコーディング・マガジン2017年8月号より

Text by Susumu Kunisaki

『岸田繁「交響曲第一番」初演』インタビュー

 自身がフロントマンを務めるくるりでは、『ワルツを踊れ』(2007年)をはじめ、クラシックの要素を取り入れた作品を多数発表してきた岸田繁。そんな彼のもとに2014年冬、京都市交響楽団(京響)から"オーケストラ作品を書き下ろしてほしい"という驚くべきオファーがあった。初めての経験ではあったが岸田は1年半もの歳月を費やし「交響曲第一番」と名付けたオーケストラ作品を作曲。2016年の暮れにローム・シアター京都メインホールと東京オペラシティコンサートホールにおいて、京響の常任指揮者である広上淳一氏の指揮により初演を行い、いずれも満員の観客から万雷の拍手をもって迎えられた。ローム・シアターでの公演は録音も行われ、去る5月に『岸田繁「交響曲第一番」初演』と題したCDとして発売、クラシックのCDとしては異例の売れ行きを示している。全五楽章、50分にも及ぶこの大作はいかにして作曲されたのか? 録音にまつわるエピソードとともに岸田本人に語っていただくことにしよう。

作曲しながら盛り上がりたいので打ち込みは VIENNA SYMPHONIC LIBRARYを鳴らしながら

─ 岸田さん自身、"いつかは交響曲を書きたい"という思いがあったのでしょうか?

岸田   機会があればとは思っていました。劇伴の仕事をやるようになってから、やっぱり管弦を入れた生のアンサンブルは魅力的だと感じていたので。

─ もともとクラシックはお好きだったのですか?

 岸田   はい。小学三年生くらいから親に連れられ、それこそ京響の定期演奏会を聴きに行ってましたね。

─ では今回は子供のころよく聴きに行ったオーケストラから作曲を依頼されたということなのですね?

岸田   そうなんです。本当に光栄で。きっかけは京響の柴田智靖さんというマネージャーと知り合ったことで、彼がマネージャーになってからの京響はSalyuとのコラボやシュトックハウゼンの「グルッペン」の演奏などいろいろな試みをしているんですが、そんな彼からポップスとのコラボではなく、オーケストラのための曲を書いてみないかとオファーされたんです。

─ 劇伴経験があるとはいえ、今回の「交響曲第一番」は50分超えの大作です。やるからには大作を、と?

岸田   いや、最初は組曲や交響詩のようなイメージを持っていました。ただ、自分の好みはマーラー「交響曲第五番」やバルトーク「管弦楽のためのコンチェルト」とか、五楽章あるシンメトリーなものなので(笑)。

─ 失礼な質問かもしれませんが、いきなりそんな大曲が書けるものなのでしょうか?

岸田   最初はアイディアをどんどんスケッチしていったんです。でも、それだと煮詰まるというか、自分的にも落としどころが分からへんから、一回、古典的な形式に則って書いて、それを『ワルツを踊れ』などで一緒に仕事をしているフリップ・フィリップに聴かせたんです。そうしたら"モチーフが多過ぎる"と言われました。それは狙いでもあったんですけど、フリップからは1つのフレーズを数学的に理解して、フーガを使うにしても時間を引き延ばしたりとか、譜面を逆から読んでみろとか、幾つかヒントのようなものをもらったんです。そのアドバイスに忠実に作り直したものを彼に聴かせたら"バッチリ"だと。それが今回の第四楽章になりました。

─ では、ほかの楽章はその方法を生かして作曲を?

岸田   いや、第四楽章が形になったので、あとは好きなことをやろうということでスケッチのままに(笑)。

─ オーケストラの書き方はいろいろあると思いますが、岸田さんはどういう作り方をしたのですか?

岸田   ピアノだけで作ってオーケストレーターさんにアレンジしてもらう方法もあるんですけど、やっぱり作曲しながら盛り上がりたい......シンバルがジャーンと鳴ってほしいし、コントラバスのでかいピチカートが聴きたいので、AVID Pro ToolsでVIENNA SYMPHONIC LIBRARYの音源を鳴らしながら打ち込んでいきました。

─ 具体的にはどうやって打ち込みを?

岸田   僕は鍵盤が弾けないので、アタマの中で鳴っている音をマウスを使ってピアノロール画面にポチポチと置いていくだけです。ノートを置いて、次に同じくマウスでキー・スイッチを入れてアーティキュレーションを付ける。この動作だけは死ぬほど速くできます(笑)。

─ 譜面ソフトを導入しようとは?

岸田   最初は考えたんですけど、僕は音楽教育を受けたわけではないので、そういう人間が譜面を使って記号を置いていくというのはおこがましい......大して漢字の読み書きができない人がスマホで"薔薇"って打ってるみたいで(笑)。それだったら図形譜の方がより殺伐としていて、実際音になったときの喜びがでかいなと...。

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年8月号にて!)


特別定価 1000(本体926円+税)

品種雑誌
仕様B5変形判 / 268ページ
発売日2017.06.24

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