リットーミュージック

ビートルズのカバー曲をひたすら集めた究極のディスクガイドが発売中
「レボリューション9」にもカバーがあった!

こんにちは&こんばんは、ギター・マガジン元編集長の野口です。このたびビートルズに関する新刊を出したので、その内容を紹介します。
僕はビートルズの大ファンですが、ビートルズのカバー・バージョンも好きで、見つけるとついつい買ってました。例えばフィーリーズの「シー・セッド・シー・セッド」とか、ママス&パパスの「アイ・コール・ユア・ネーム」とかね。なんか気になるんですよね。僕のまわりのビートルズ・ファンにもそういう人は多いです。ということは、けっこうみんな気になっているんじゃないかな、と思って企画したのがこの本です。

ビートルズの公式リリース楽曲213曲にはすべてカバー曲が存在するのを知っていますか?「イエスタデイ」や「ヘルプ!」などの有名曲から「レボリューション9」や「ワイルド・ハニー・パイ」といったレア曲まで全部にカバーがあるのです。その数はなんと数万曲にのぼると言われます。その中から各曲につき10曲をセレクトし、ランク付けしました。著者は2017年のベストセラー『真実のビートルズ・サウンド完全版』でそのマニアックぶりを披露した川瀬泰雄さん。15,000曲を超える自身のコレクションの中から選びに選び抜いて順位をつけました。ベスト3にはジャケット写真と詳しい解説を付しています。ジャケ写はもちろんオールカラー。ビートルズがのちの音楽シーンに与えた影響を探る一冊としても最強のディスクガイドです。

というわけで、ビートルズ・ファンなら楽しめる本だと思いますが、あえてオススメの使い方を紹介すると……。

本書の正しい使い方
1. 読んで知識を増やす
2. ジャケット写真を楽しむ
3. 気になるカバー曲を買う
4. You Tubeで検索して聴いてみる
5. パソコン上でビートルズのアルバムの収録曲通りにカバー曲を並べ、
自分だけのコンピレーションを作って楽しむ

こんな感じでしょうかね。で、とにかく推奨したいのが5です。ビートルズのオリジナル・アルバムをすべてカバー曲で構成してみると、どうなるか。これが世にも素晴らしいコンピレーションになるんですよ。何しろビートルズの曲にはすべてカバーがありますから、何通りものコンピレーション作りが可能です。その際に役に立つのが本書というわけ。パソコン上でiTunesなどに取り込んでセットリストにしてみましょう。本書のランキング1位だけのコンピ、2位だけのコンピ、ランダムな順位のコンピ、などなど好きな組み合わせで作ってみてはいかがでしょう。

それでは、ちょっと試しにやってみましょうか。ここでは『ABBEY ROAD』の収録曲を本書ランキングのベスト3から選んで、バーチャル・コンピを作ってみました。以下、お楽しみください。解説は本書から抜き出しています。

『ABBEY ROAD』をカバー曲で構成

A面

1. Come Together
Sugarpie And The Candyman

本書のランキング 3位

 シュガーパイ&ザ・キャンディメンは2008年にイタリアで結成されたレトロ・スウィング・ジャズ・クィンテット。紅一点のボーカリストは、シュガーパイこと Georgia Ciavatta。アップ・テンポのスウィング・ジャズ風のトランペットとギターのユニゾンでスタートし、ピッタリとシンクロしたノリのよい女声のジャズ・コーラスが始まる。この速いテンポで小気味よいほどドライブして、完璧な 50年代のスウィング・ジャズに仕上げている。ジョンの曲だが、ポールが喜びそうなサウンドである。

2. Something
Jim Sturgess

本書のランキング 1位

 映画『Across The Universe』のサントラから。この映画にはビートルズの楽曲が31曲使われ、俳優陣が実際に歌っている。主演のジム・スタージェスは「Something」で圧倒的な存在感で曲の魅力を引き出している。歌とオルガンのコードだけで始まるのだが、声のよさと歌唱力で瞬殺されてしまう。リズム・セクションが入ってくるとますます説得力が増してくる。この映画音楽を担当したプロデューサーの、映画とは関係ないビートルズのトリビュート・アルバムを聴いてみたい。

3. Maxwell's Silver Hammer
Rock 4

本書のランキング 2位

 ロック4はオランダのアカペラ・グループ。アカペラ・グループのベースはハッキリと低音を出すのが難しいのだが、ロック4の場合リード・ボーカル以外はダブル・トラッキングで音を厚くしているため、より聴きやすいバランスになっている。

4. Oh! Darling
Corcovado Frequency

本書のランキング 2位

 アルゼンチンのブエノスアイレスを中心に活躍するミュージシャンを集めて作った、ビートルズのカバー・アルバムに収録。イージーな寄せ集め作品集になることがないようにきめ細かい企画を立て、録音したという。ビートルズの曲がタンゴのアレンジで演奏されると曲調まで変化するという面白さがよく出ている。「Oh! Darling」はコルコバードから来た3人組のコルコバード・フリーケンシーによって演奏された。ミディアム・テンポの軽快なリズムだが、短調にアレンジされ、どこか物悲しさを感じさせる。あまり聴いたことのないオリジナリティのある曲に仕上がっている。

5. Octopus's Garden
Markey Ramone Feat.Gabriel Peluffo & Guillermo Peluffo

本書のランキング 1位

 マーキー・ラモーンは 1956年、ニューヨーク生まれ。アメリカのパンク・バンド、ラモーンズの高速 8ビート・ドラマーとして活躍した。ラモーンズの存命メンバーの中で唯一のロックの殿堂受賞者(2002年)である。「Octopus’s Garden」のカバー・バージョンは、唯一だろうと思われる8ビートのロック・アレンジ。イントロから「♪ガン・ガン・ガン・ガン」というギターのコード弾きで始まるのだが、メロディや曲の持つテンポはオリジナルとそれほど変わらず、曲のイメージは壊れていないところがベテラン・パンク・ロッカーの余裕だろう。

6. I Want You
Sarah Vaughan

本書のランキング 1位

 サラ・ヴォーンは1924年、米ニュージャージー州生まれの女性ジャズ・ボーカリスト。先駆者であるが、ジャズだけに収まらない幅広い音楽性を持つ。アントニオ・カルロス・ジョビンと共演したり、81年にはビートルズ・カバー・アルバムを制作。レコーディングには、リー・リトナー(g)、スティーヴ・ポーカロ(k)、ジェフ・ポーカロ(ds)等を起用している。「I Want You (She’s So Heavy)」はジャズ・シンガーというよりも、ファンキーなロック・シンガーとも言えるほどカッコいい。