リットーミュージック

DISC 2

8Revolution 1

レボリューション1

1968年5月30日、31日、6月4日、21日、アビイ・ロード第2スタジオで録音

『ホワイト・アルバム』のレコーディング・セッションはこの曲から始まった。

 それぞれがインドで書きためた曲や、ストックしてあった曲をアルバム用にまとめるため、4人はサリー州イーシャーのジョージの家に集まりデモ・テープを作った。通称、イーシャー・デモと呼ばれるテープである。この中にはアルバムに収録されなかった曲が6曲入っていた。ジョンの「ジェラス・ガイ」となる「Child Of Nature」、アルバム『アビイ・ロード』に入れられる「ミーン・ミスター・マスタード」、「ポリシーン・パン」、ポールのソロ・アルバムに収録される「ジャンク」、ジョージのソロ・アルバムに収録される「サークルズ」、ジャッキー・ロマックスがリリースしたジョージ作曲の「サワー・ミルク・シー」などがある。ジョンの作曲意欲が復活したと見えて、『ホワイト・アルバム』には14曲も収録された。ポールは7曲、ジョージが5曲というバランスになった。

 最初にレコーディングしたのはシングル候補として録音された、この「レボリューション1」バージョンだった。しかし、ポールやジョージはシングルにするにはテンポが遅すぎる、と難色を示したので、テンポを速くしてレコーディングしたものをシングルとして発表した。

 実は、当初、この曲は10分以上の長さがあった。それをアルバム用に4分15秒ほどに縮めたのが「レボリューション 1」バージョンだった。そしてこのバージョンに使われなかった、残りの演奏が延々と続き、混沌とした部分は「レボリューション9」の主要部分に使われている。

 ジェフ・エメリックの「Take 2」の声が入り、ジョンの弾くハンマリングを使ったアコースティック・ギターのカッティングでスタート。そこにジョージの鋭いエレキギターの3連のフレーズが入ってくる。そのバックで、ジョンがパーカッション代わりにタイプライターを叩く。

 サビの「♪ But when you talk about destruction」からブラス・セクションが入ってきて厚いサウンドになっていく。エンディングでは様々な音が入ってきてフェイド・アウトしていく。このレコーディングのテイク3のフェイド・アウトは27分11秒もあったという。このカットしたフェイド・アウトから「レボリューション9」のベーシックが作られている。

 この曲のサウンドには特筆すべきことが4点ある。

① 最後の「♪ Don’t you know it’s gonna be alright」の後でバスドラが3 回「♪ドン、ドン、ドン」となる部分。ここは3 回だと明らかに1拍多いのだ。ジェフ・エメリックによると、テープ編集のミスで1拍増えてしまったものらしいが、変拍子が好きなジョンはどうしても残しておけと言い張り、ジェフ・エメリック言うところの「クリエイティブな偶然」ということで曲の一部になったのである。まさにジョンの置き土産である。

② 曲が始まる前に聴こえる早口の高い声で「Take 2」と言う声。これはジェフ・エメリックの声なのだが、ジョンが面白がってわざと消さずに残しておいたのだ。

③ ジョンの声質。自分の声が嫌いなジョンは、何とかして別の声質に変化させようと、床に寝そべってこの歌を歌っている。マーク・ルイソンの『ザ・ビートルズ・レコーディング・セッションズ』にはそのときの写真が載っている。

④ 最初に録った「レボリューション1」バージョンのレコーディングのときはジョンは、まだ革命について確固たる意見は持っていなかった。ただ、ビートルズの中ではジョンが最も政治的で、左翼的雰囲気を持っていた。レーニン主義者や毛沢東主義者から、経済的な支援や精神的に支援を求められていた。

 社会の変革を望んでいるジョンは、革命家たちの意見を尊重して詞を書いた。

 「誰だって世界を変えたいと思っている。でも破壊を口にするなら、僕を仲間に数えないでくれ(カウント・ミー・アウト)」と書いたのだが、まだジョン自身の意見がハッキリしなかったため、その後に「入れてくれ(イン)」とつけ加えた。

 その後、この曲がシングル候補から外され、新たにテンポ・アップしたバージョンをレコーディングすることになった。この録音のときにはジョンの意見も固まっていた。もちろん暴力反対の意見だった。今度のレコーディングでは自信を持って「破壊を口にするなら、僕を仲間に数えないでくれ」と歌った。しかし、後に録った「仲間に数えないでくれ」と歌ったシングルが先に発売されてしまい、「仲間に数えないでくれ、入れてくれ」と悩んだバージョンが、アルバムに収録されて後から発売された。ファンは発売された順番で詞を聴いたために、ジョンが心変わりをして破壊活動に賛成し始めたように受け取られてしまった。

 当初、ジョンにはドゥ・ワップ・サウンドというイメージがあり、このバージョンでは「♪ Shoo bee doo wap, pao Shoo bee doo wap」というコーラスがついていたのだが、シングル・バージョンではなくなっている。ただ、シングルのプロモーション・ビデオではこのコーラスをつけている。

 この曲でもジョンの変拍子病は何気なく発揮されている。歌が始まって2小節は4分の4拍子なのだが、3小節目だけが4分の2拍子になっているのだ。おそらくジョンは、譜面に書き表すことなど考えていないと思うので、ジョン自身にとってはこれが自然だったのであろう。聴いていても不自然に感じなかったのだが、いざ演奏しようと聴いていて気がつくといった状態だった。それは「♪ You say you want a revolution well you know」の「♪Well you know」の箇所。バックのサックスのフレーズが基本的には「♪バ・バッ(2)・バ(1)、バ・バッ(2)・バ(1)」と吹いているのだが、その4分の2拍の小節のときは「♪バ・バッ(2)・バ・バッ(2)・バ(1)」と「♪バ・バッ」が余分に入っている。

<使用楽器>
ジョン:ギブソンJ-160E、エピフォン・カジノ、タイプライター
ポール:リッケンバッカー4001S、ハモンド・オルガン、ピアノ
ジョージ:ギブソンJ-160E、ギブソンSG
リンゴ:ドラムス、マラカス
トランペット:デレク・ワトキンズ、フレディ・クレイトン
トロンボーン:ドン・ラング、レックス・モリス、J. パワー、ビル・ポーヴィー