リットーミュージック

DISC 2

7Long Long Long

ロング・ロング・ロング

1968年10月7日、8日、9日、アビイ・ロード第2スタジオで録音

ジョージが自分の世界を築き上げている

 当初のタイトルは「It’s Been A Long Long Long Time」だった。スタジオにインドから取り寄せたお香を焚いてレコーディングした。ジョージは自伝『I・ME・MINE』の中で「この詞に出てくる“ あなた” は神のことを歌っている。あまり覚えていないがコードに関してはボブ・ディランの〈ローランドの悲しい目の乙女〉がヒントだったと思う。〈D〉から〈Em〉、〈D〉、〈A〉という3つを使ったコード進行だ。レコーディングのあいだ、ずっとレズリー・スピーカーの上にワインのボトルが置いてあった。ポールがオルガンを弾くとスピーカーがふるえ、ボトルがカタカタと音をたて始めた。曲の最後の部分でその音を聴くことができる」と言っている。

 ボブ・ディランの「ローランドの悲しい目の乙女」は1966年リリースの2枚組『ブロンド・オン・ブロンド』の最後の面を丸ごと占めている。

 ベーシック・リズム・トラックはジョージのアコースティック・ギターとボーカル、ポールのオルガン、リンゴのドラムスでレコーディング。

 ポールが弾いたハモンド・オルガンのレズリー・スピーカーの上にあったワインのボトルの音は偶然鳴ったものだったが、この音を気に入って、マイクを立ててもう一度レコーディングした。この音を強調するためにリンゴがテンポの速いドラミングをオーバー・ダビングした。オルガンの音はADTでダブル・トラッキングをして加工している。

 ジョージはこのアルバムではシタールやタンブーラを使ってはいないが、雰囲気を出すためにアコースティック・ギターを強く弾き、ギターの振動をシタールの響きのようにしている部分もある。

 8日にジョージのセカンド・アコースティック・ギターとセカンド・ボーカル、ポールのベース。9日にポールのボーカル、クリス・トーマスのピアノをオーバー・ダビングした。アコースティック・ギターはカポタストを3フレット目につけてロー・コードで弾いている。このことでボブ・ディランのコード進行の響きが再現される。

 曲のイメージとは違うリンゴの激しい叩き方のドラミングが、非常に効果的で印象的だ。

 アナログLPではC面の最後に収録された。CDでは曲が繋がってしまうのでA、B 面の区別がつかなくなっているのだが、アナログLP時代ではLPのA、B 面やC、D面の1曲目と最後の曲には重要な意味があった。筆者もLPの曲順を決めるときの重要な位置だと思っていた。CD時代になってからは曲順の意味合いやジャケット・デザインの芸術性などが表現しにくくなってきた。これからはダウンロード購入などでは楽曲そのもの以外の表現は、ほとんど意味のないものになってしまうのが残念である。

<使用楽器>
ジョン:不参加
ポール:リッケンバッカー4001S、ハモンド・オルガン
ジョージ:ギブソンJ-160E
リンゴ:ドラムス、マラカス
クリス・トーマス:ピアノ