リットーミュージック

DISC 2

5Sexy Sadie

セクシー・セディー

1968年7月19日、24日、8月13日、21日、アビイ・ロード第2スタジオで録音

マハリシの悪い噂を信じたジョンが書いた

 超越瞑想を学ぶためにビートルズはインドのリシケシュへ行き、マハリシ・マヘシュ・ヨギの元でセミナーを受けた。あるときマハリシが同行した女性に言い寄っただとか、ビートルズの金が目当てだとかの噂が出始めた。ジョージはマハリシを信じていたが、ジョンをはじめとするメンバーたちは噂を信じてしまい、キャンプを出て行くことにした。そして裏切られたと感じたジョンがそのときのことを歌にした。

 当初の詞は「Maharishi, what have you done ~」だったが、ジョージが否定したためと、後で問題が起こらないように「Sexy Sadie」に変えた。

 しかし、実際は噂に過ぎなかったようである。後に、噂をたてたのは、ジョンがリシケシュへ呼び寄せたマジック・アレックスだったこともわかった。アレックスはジョンが自分に疑いを持たないようにマハリシから遠ざけようと画策した。

 このアレックスは、4トラックのレコーディング・マシンしかなかった当時、72トラックのレコーディング・システムや、壁紙をスピーカーにするといったアイデアをジョンに吹き込み、信じ切ったジョンの強い推薦で(他のメンバーやジョージ・マーティンは半信半疑だったが)、アップルのエレクトリック部門を任されたマジック・アレックス(アレクシス・マーダス)だったことも後にわかった。結局、アレックスは何ひとつ実現させることはできず、住み心地の良かったアップル・スタジオに無意味な16個のスピーカーを付けて、配線すらでたらめな、使い物にならない部屋にしただけの詐欺師だった。

 イントロはジョンが弾くショート・ディレイをかけたピアノ(ポールが弾いたとも言われている)が4拍目の8分音符ふたつのきっかけから入る。この4拍目のふたつの音のフレーズがかなり効果的な二発である。

 歌のアタマは「♪ G → F# → Bm → Bm → C → D7」を2拍ずつ3小節弾くところから始まるが、随所で使われているこの「♪ G → F#」というコード進行がこの曲の印象を決めている。

 アウトロでジョージのディストーションの効いたギターが、このコードにうまく乗せた繰り返し風のフレーズを弾いている。時々盛り上げるようなフレーズを弾いているのだが、これも行き過ぎない微妙なところで繰り返しのパターンに戻っている。ここにもジョージのセンスの良さが出ている。

 デモ・テープを聴いたジョージの反対で、タイトルを「マハリシ」から「セクシー・セディー」に変えたジョンも、誤解だったことがわかったときには、さぞかしほっとしたことだろう。マハリシへの非難だけに終わらせていないところがビートルズ・マジックか。コーラスの「♪Wa wa wa」や「Si,si, si」や「♪ Sexy Sadie」、「♪ Sexy Sadie she’s the greatest」、「♪ Sexy Sadie she’s the latest and the greatest of them」など、かなり複雑に入り組んだコーラスがこの歌に深みを加えている。

<使用楽器>
ジョン:ピアノ、ハーモニウム
ポール:フェンダー・ジャズ・ベース、ピアノ(?)
ジョージ:ギブソン・レス・ポール、フェンダー・ストラトキャスター
リンゴ:ドラムス
不明:タンバリン、マラカス、ハンド・クラップ