PICK UP

2017.09.06

アコースティックギター&ウクレレ・マガジン

岡崎倫典ロング・インタビュー〜ギター・インストゥルメンタルの探求|『フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20』発売記念

text by Shinichiro Sekiguchi / photo by Takashi Hoshino

海外のギター・シーンとソロ・ギターの魅力

─近年は国内だけでなく、中国や韓国の方でも活発に演奏活動をしていますが、あちらのギター・インスト・シーンの印象はいかがですか? 

 盛り上がっていますよ。日本とは桁が違いますからね。日本の場合、ギターという楽器やスタイルは歌の伴奏としての歴史が長いじゃないですか。そこから離れられないところもあったりしますけど、韓国や中国では、もともとギターが歌の伴奏楽器というイメージが日本ほどないんです。だからいきなりソロ・ギター・スタイルというジャンルがどっと出来上がっちゃって。日本なら全国各地にソロ・ギターの愛好サークルが独立してポツポツある感じだと思うんですけど、韓国に行ったときに、そういうサークルが全国的な組織としてあると聞いて驚きました。会員数はどれぐらいなんですか?と聞くと、今のところ38万人ですと(笑)。弾く人だけではなく、聴く人も会員さんなんですけどね。

─今回の本の解説にもありましたが、中国や台湾では日本の曲を知っている方も多いようですね。

 今回収録した「北国の春」の人気はすごいですよ。路上でおじさんがサックスで吹いていましたからね。向こうの方に一番知られている日本の曲は何ですか?と聞くと「北国の春」という答えはけっこう多いです。あとはテレサ・テン。「時の流れに身をまかせ」はみなさんよく知っていますと事前に聞いていたんですけど、曲を弾き始めたら、観客のみんなが歌い始めて。日本ではある程度の年齢の方でないと知らない曲じゃないですか。でも、向こうでは10代の少年少女が歌っているんですよ。国民的な歌なんだなと。歌詞は中国語ですけどね。今回の収録曲だと「昴」なんかもよく知られていました。

─ギター・インストなら海外の方とコミュニケーションが取りやすいこともあるかもしれませんね。

 そうですね。お互いにギターを弾いているだけで会話ができますから。それで心が通じ合うというか。

─フィンガースタイル・ソロ・ギターの魅力は、どんなところだと思いますか?

 ひとりで表現できて、ひとりでライヴまでできるところですね。そういう手軽さ。歌詞はなくても、かなり幅の広い表現ができますよね。それはギターという楽器がそうであって、フィンガースタイルだからというものではないかもしれませんが。ただ、ストロークやフラットピッキングよりも、ギターの持つ魅力や可能性のかなりの要素を引き出せる弾き方だとは思いますね。押さえる側も弾く側もほとんど指先で触れるわけじゃないですか。例えばフラットピッキングだと押さえる方は指だけど、弾く方はピックですよね。そのあたりで音色ひとつ取ってみても個性が出やすいんじゃないかな。

─楽譜集には『フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集』というタイトルがつけられていますが、倫典さんにとって"名曲"とは?

 いろんな人が口ずさむ曲というのは、どんな時代であっても名曲でしょうね。どちらかと言うと僕はメロディ志向かもしれないけど、歴史を変えるような歌詞を持った曲──歌から流行るようになった言葉とかね──そういうのもある意味、名曲。あとはメロディということで言えば、僕はドキッとするような艶っぽいメロディが好きですね。そして、そこに絶妙のコード進行が加わると、よりその魅力が増す。名曲と呼ばれているものには、かなりの確率で絶妙なコード進行がつけられていますよね。

─なるほど。では最後に、このシリーズの新刊を待ち望んでいた読者にメッセージをお願いします。

 今までの本と同様に、おそらくほとんどの方は演奏が難しいと感じると思います。でもその中でも比較的簡単な曲はありますし、そこにちりばめられたエッセンス──ミュートや和音、コード進行、休符とか、そういうところを気にして見てもらえたら、すごくプレイヤーとしての糧になると思います。曲を通して弾けなくても、そういった部分的なプレイやアイディアだけでも自分の引き出しに入れておいてほしいですね。そしてそれを必要なときに引っ張り出してもらえれば、大きな武器になるはずです。あとはギターを弾かない方にも、ぜひCDを聴いてほしいですね。


フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20

2,160(本体2,000円+税)

品種楽譜
仕様菊倍判 / 88ページ / 模範演奏CD付き
発売日2017.09.13

<収録曲一覧>
(赤色の文字の曲は、リンク先で岡崎氏自身による演奏動画が視聴できます)

◎デイドリーム・ビリーバー
◎あの時君は若かった
◎また逢う日まで
◎ケアレス・ウィスパー
◎初恋
◎北国の春
オネスティ
ウィズアウト・ユー
◎真夏の果実
また君に恋してる
◎ゴッドファーザー 愛のテーマ
◎赤とんぼ
◎夜想曲 第2番 変ホ長調
◎ウイスキーが、お好きでしょ
◎セプテンバー
◎ロビンソン
◎昴
イマジン
雪の華
◎蛍の光

※またこちら から、他の収録曲の一部を紹介した宣伝動画をご覧になれます。


<著者プロフィール>
岡崎 倫典(おかざき りんてん)
1954年広島県生まれ。18歳のときに上京、立教大学在学中の21歳からプロとしての活動をスタートさせ、数多くのアーティストをサポートする。80年からアコースティック・ギターによるインストゥルメンタルの作曲を開始。以後、ジャンルを越えた独自のギター・サウンドを確立し、ソロコンサートツアーをはじめ、CM楽曲を手がけるなど積極的に展開中。06年には韓国にて自身のソロ・アルバム3枚が発売された。