PICK UP

2017.09.06

アコースティックギター&ウクレレ・マガジン

岡崎倫典ロング・インタビュー〜ギター・インストゥルメンタルの探求|『フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20』発売記念

text by Shinichiro Sekiguchi / photo by Takashi Hoshino

_S1_5277.JPGカバー・アレンジのこだわり

─『アコースティック・ギター・マガジン』で創刊号から続く連載のように、カバー曲を手がけるのはもっとあとですか?

 ライヴ用にいろんな曲をアレンジして弾いていたことはあるけど、初めて真剣にカバーをすることになったきっかけは、『エンジェル 僕の歌は君の歌』(1992年)という映画のサウンドトラックですね。主題曲がエルトン・ジョンの「ユア・ソング」で、それをいろんな形にアレンジしてほしいと。それもあって、記念すべき『アコースティック・ギター・マガジン』連載の第1回は「ユア・ソング」なんですよ。

─その連載を始めたきっかけは?

 その前身に『アコースティック・ギター』というムック本があったんですね。そこでオリジナル曲をピックアップしてもらったり、インタビューしてもらったり、いろいろとお付き合いがあって。それで『アコースティック・ギター・マガジン』が創刊されるときに、編集長の方からこういう連載をやってみませんかと。

─その連載も2017年夏号で73回になります。

 もう18年以上。おかげさまですよ。だから今回の楽譜集も出せるし。

─毎回、選曲で心がけていることは?

 やはり自分が弾きたい、アレンジしてみたい曲ですね。自分でいい曲だと思えないと触手が動かないですよ。

─これまでの選曲を見てみると、古い洋楽、古い邦楽、クラシックなどを中心に構成されていますが、これはあくまでも結果的なものでしょうか?

 そうでしょうね。あとは傾向として最近の曲はアレンジしにくいんですよ。転調がやたらと多いでしょ? それとみなさんキーボードや打ち込みで曲を作るからか、コードがわかりづらいものがあって、昔のように3コードで名曲というのは少ないんですよ。その転調の仕方も1音や1音半ならいいんですけど、ものすごい転調をしたり。でも楽曲として聴くと、あんなすごい転調をして、なぜかすんなりと聴けてしまう。そういう良さはあるんですけど、いざギター・インストにしようとすると、かなりのハードルになってしまうと。

─アレンジはどのような手順で進むのでしょうか?

 原曲がある場合は原曲の音を取ります。コード進行やメロディですね。例えば一番と二番で歌詞の符割りや歌い回しも違う場合は、そこもしっかりと音を取るんです。ベース・ラインも絶対に取りますね。あとはテンション・ノート。譜面に起こすこともあるし、ギターでなぞって覚えてしまうこともある。でも、童謡やすごく古い曲には原曲が存在しないじゃないですか。そういう場合は自分で勝手に作ります。

─ということは、しっかりとコピーするところから始めると?

 そうですね。"そのフレーズがなければ、この曲じゃない"というフレーズがあれば、それもそのまま完コピします。あとは原曲のノリですよね。どのようなリズムで作られているのか。それをわかって手を加えるのと、わからずにアレンジするのとでは全然違うんですよ。その上で自分がアレンジャーならこういうコードを入れるなとか、そういうところは変えていきます。ただし手を加えるにしても、原曲の魅力は絶対に壊してはいけない。そこを間違えてやってしまうと、原曲を知らない人が良い曲だと思う確率が下がっちゃうんですよね。

─その後、いろいろとキーを変えてみたり?

 原曲と同じキーというわけにはいかないので、キー選びはけっこう難しいですよ。メロディの範囲がどこからどこまでかというところで、このキーならどこまで行けるかとか。だからキーを探るためにもメロディの範囲は探っておかないといけないし。そのメロディの範囲でベース音とメロディの間に和音が取れるのか、取れないとなれば淡々とやるのか、キーを変えるのか、あるいはチューニングを変えるのか。そうしたこともすべて探っていかないといけない。結果的にオリジナルと同じキーになった場合は偶然と思った方がいいかな。ただし、今回の本でこれは原曲とキーを同じにしないといけないと思ったのはショパンですね。曲名に"変ホ長調"ってキーが指定されているから(笑)。あとは弾きやすさを優先させてしまうと明るくなりすぎることもありますよね。ハイ・フレットのカポだと曲調が明るくなるでしょう? それは避けた方がいい場合もあるし。僕はカポなし、2フレット・カポ、4フレット・カポが多いですね。それだとポジション・マークの位置がカポなしと同じで弾きやすいので。ただし、ショパンはそれを許してくれなかった(笑)。3カポになっています。

─今回の選曲で、特に思い入れのある曲は? やはりアレンジに苦労した曲でしょうか?

 苦労したというか、ちょっと凝りすぎたなという曲はありますね。凝るというのは原曲らしさを損なわないようにするということでもあって、例えば「ケアレス・ウィスパー」や「初恋」「ロビンソン」のベース・ライン。これを弾くのはかなり難しいと思います。あと違う難しさで、こんなにセーハばかり続いていいの?という曲が「セプテンバー」。これは練習だけで手がつるかも。ただ、どの曲もそうですけど、良い曲だなと。インストでアレンジしてみるとよくわかります。

─倫典さんはレコーディングの前に、一度譜面に起こすと聞きました。弾きながらアレンジするというよりは、一旦アレンジ譜として完成させてから弾くと。

 そういうステップが多いですね。あとで微調整はしますけど。だから譜面どおりに弾くのはけっこう大変ですよ。基本的に僕はメロディ譜にコード・ネームを振って弾いている感覚なので、ライヴで弾いたりすると、細かなポジションは毎回変わりますよね。"昨日はここで5弦と3弦だったのに、今日は5弦と4弦じゃないですか"なんてたまに言われるんです(笑)。ただ、ライヴではそれが許されるけど、本では許されないから、そこは大変ですよね。

次ページ:海外のギター・シーンとソロ・ギターの魅力


フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20

2,160(本体2,000円+税)

品種楽譜
仕様菊倍判 / 88ページ / 模範演奏CD付き
発売日2017.09.13