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2017.09.06

アコースティックギター&ウクレレ・マガジン

岡崎倫典ロング・インタビュー〜ギター・インストゥルメンタルの探求|『フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20』発売記念

text by Shinichiro Sekiguchi / photo by Takashi Hoshino

_S1_5308.JPGギター・インストゥルメンタルへの傾倒

─その後、ソロ・ギターの世界に向かっていくきっかけは?

 それも大学時代からかな。けっこう漁っていた時期があるんですよ。キッキング・ミュールとかラウンダー、シャナキーといった、泥臭いアコースティック・インストをリリースしていたレーベルがあって。ステファン・グロスマンもキッキング・ミュールから出していましたよね。あとはクラシック・ラグのエリック・ショーエンバーグやデイヴ・レイブマンとか。

─それがアコースティック・ギターのソロ・スタイルとの出会いだったんですね。

 ギター1本の世界としては、そのあたりがルーツかもしれないですね。ただ、影響は受けたかもしれないけど、正直そうした音楽はあまり好みではなくて。たくさんコピーもしたんですけど、どれも同じように聴こえてしまうというか。やはり自分の中で強烈に印象に残っていたのは、ツェッペリンの「ブラック・マウンテン・サイド」だったり、インストじゃないけど「青い目のジュディ」(クロスビー、スティルス&ナッシュ)だったり。そんな中、サポートの仕事をしながら、1980年頃からオリジナルのインストを作り始めたんです。

─それはやはりステファン・グロスマンあたりの影響で?

 いや。オープン・チューニングで、まったく違うスタイルで曲を書いていたんですよ。でも、何か難しいなと思っていたちょうどその頃、マイケル・ヘッジスのデビュー・アルバム『ブレックファスト・イン・ザ・フィールド』が出たんです。"やられた~!"と思った。これだよ、俺がやりたかったのは。先にやられちゃったなって。

─アコースティック・ギターのソロ・スタイルということで、ヘッジスに衝撃を受けたと?

 ただ、ヘッジスに関しては、演奏スタイルというよりも世界観というか風景。テクニック以前に音楽に風景やグルーヴみたいなものを感じて、それが自分のやりたかったことにつながっていくんですよね。ヘッジスが在籍していたウィンダム・ヒル・レーベルの打ち出し方も大きかったんでしょうね。ジャケットやデザインを通したイメージの作り方とか。それでヘッジスの前にどんなアーティストがいたんだろうって、今度はヘッジスから時代を逆に辿っていったんです。するとアレックス・デ・グラッシとかウィリアム・アッカーマンを知って、その人たちのアルバムを聴くと、あ、いいな。ヘッジスだけじゃないんだって。

─それでこれからはこういう音楽をやっていこうと?

 いや、そんな急には(笑)。だけど、ヘッジスにしてもウィリアム・アッカーマン、アレックス・デ・グラッシにしても、ウィンダム・ヒルのアーティストに感じたのは、それまでに感じられなかった風景や言葉。歌詞がないのに言葉で語られているように聴こえてくるというか。もちろん弾いている側と聴いている側ではまったく違うものをイメージしているのかもしれないけど、そうしたものが感じられるだけでも、それまで聴いていた音楽とは違うなと。とは言え、ウィンダム・ヒルだけにそこまでのめり込んでいたわけでもなく、さまざまなアーティストのいろんなアルバムを聴いていましたよ。歌ものでもアコギの使い方がうまいバンドがドッと出てきていた時期だし。

─そんな中、温めていたアイディアがひとつの形になったのが1990年の初のソロ・アルバム(『Bayside Resort』)ですか? やはりアコースティックのインストをやってみたいという気持ちがあったのでしょうか?

 そうですね。それにずっとサポートだけを続けていくべきなのかというモヤモヤした時期でもあって。サポートをやっていると、メインに立っているアーティストの方がすごくカッコよく見えたんですよ。自分で看板を背負うという生き方がカッコいいし、年上年下も関係なく、尊敬に値するというか。では、そこで自分には何ができるのか?と思ったときに、弾き語りではないな、ギター・インストだよなと。でも、当初はギター1本という感覚はなかったし、フィンガースタイルで行こうという思いもなかった。だから『Bayside Resort』は全曲オリジナルのソロ・アルバムだったけど、ギター1本の曲もあれば、リズム体が入っている曲や、ピアノと一緒に演奏している曲もあって。

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フィンガースタイルで弾くソロ・ギター名曲集 珠玉のメロディ20

2,160(本体2,000円+税)

品種楽譜
仕様菊倍判 / 88ページ / 模範演奏CD付き
発売日2017.09.13